ピアノのお散歩

ピアニスト北中綾子のブログです。音楽やピアノのこと、趣味や日々のことを思いつくままに綴っています。

ポーランド⑦ リサイタル in プシェミシル

10月23日(金)

今日はリサイタルツアー最後の、そしてポーランド演奏旅行の最後のリサイタルです

ウクライナの国境すぐ近くのプシェミシルという町です。

10時にプシェミシルからアンジェイさんという方が車でお迎えに来てくれました

「段取りは全てこちらがするから、あなたは何も考えなくていいからね、弾く事だけを考えて。」とのことで、かなり安心です。

ポーランドは平らな国なので、電車に乗っていても平らな大地しか見たことがなかったのですが、曲がりくねった、穏やかなアップダウンの道を走りました。

この時期、黄葉がとても美しいです

道を曲がった先にぱっと視界が開けて、丘全体が黄金のように輝いている景色は目に焼き付いています。思わずため息。

アンジェイさんとも色々話が弾みんで楽しみながら、小さな町をいくつも通り抜けて、1時前プシェミシルに到着。

この町もクラクフ同様、とても古くて歴史を感じる町です。

実際ウクライナとの国境の接するため、色々な歴史が詰まった町だそうですね。

さて、まずはホテルに案内されチェックイン。

フロント「パスポートを見せて。」

「えっっ、クラクフに置いてきたよ。」

「はぁ!?!?」 

アンジェイさんが慌てて自分の身分証明書を出して手続き。

というわけで、ホテルにはアンジェイさんが泊まったことになったのですが、こんなことができたのはバックにきちんとした団体?がいるからこそですよね。。。

うっかりしていました

部屋は広々ツイン。いいホテル~~

荷物を置いてホテルのレストランでランチ。

何でも好きなもの食べるようにとのことなので、ほうれん草のスープと、またゴオンプキ(ロールキャベツ)を美味しく食べました

食後は昼寝でもしてゆっくりリラックスしておくようにとのことですが、そんなに心臓強くないのでリサイタル前に昼寝はできませんねぇ(笑)

でも部屋で、「無」の状態になれたのはとてもよかったです。

3時にまた迎えに来てくれたので、ホールへ移動。

途中渋滞に巻き込まれたりしたので、ホールに着いたのは3時半回っていました。

アンジェイさんはとても良くしてくれるので、「ありがとう」と言っていたら、「綾子はありがとうを言い過ぎだよ。僕は喜んでやっているし、綾子は演奏が仕事なのだから、お互いに当たり前の事なんだよ。」と言われてしまいました。

そうなんですよね・・・留学中からマネジメントがついていたのですが、「何をしてほしいのかきちんと要求してほしい、私はあなたをサポートするのが仕事、あなたは一番いい状態で弾くのが仕事」と言われたことがあります。

この辺りの考え方を気を付けてきちんと分けておかないと、おそらくかえってトラブルに発展します・・・向こうは要求してくれない、意思表示をしてくれない、とマイナスに捉えてしまうからです。

日本に住んでいるとこういうことって忘れてしまいますね。

さて、リハーサルに入ります。

途中で主催者のトップのマグダさんが挨拶に来てくれました。

司会者もやって来て打ち合わせ、そして「ラジオが来てるから今日の演奏は録音して放送します。」云々。

ラジオ

あとで録音を日本へも送ってくれるそう・・・。

そんなこんなやっているうちに時間は経ち、リハーサルは1時間しかできませんでした。

毎日違うプログラムを弾いているので本当に大変です。

プログラムが違うし、状況もコンディションも違うので、毎回が新しいのです。3日連続でリサイタルすれば3日目なんて緊張しないものかしらと思っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。

何回リサイタルを繰り返しても(こうして毎日弾いても)緊張感から逃れることはできないのだなぁと冷静に自分を見つめていました。

でもクラクフの時にも書きましたが、いい緊張をしないと高い集中力も保てないので、とてもいい状態で臨めているのだと感じることでもありました。

6時開演。

カメラマンが並んでいます。

今日はきちんと休憩を挟み(笑)、進行はスムーズでした。

全プログラムを弾き終えた時に花束と、葉っぱ束?を貰いました。

葉っぱを1枚1枚丸めて、それを花束のようにしてあって、素敵なアイディアだなぁと思います

カサカサ音がしないのでホールに持ち込んで舞台で渡してくれるのですが、(ヤスウォの時もそうでしたが)その時に、拍手が続いている中で、今日の演奏は素晴らしかったとかその場で感想を言って称えてくれるのです。

とってもエレガント

私もゆったりエレガントにしないと(笑)みんな見てるし!とどうも焦ってしまう(笑)

8時前終演。

終演後は昨日よりもサインを求める列ができて、テーブルについてひたすら書きました

真顔で書いちゃいけないし、笑顔、笑顔・・・

次は写真また列ができて順番に撮ったのですが、もともと写真が得意ではない上に、これだけ愛想笑いしてるともう顔が引きつってるんじゃないかしら・・・

その後、主催者の方々から夕食に招待されました

先ほどのトップのマグダさんご夫妻、カメラマンの女性、誰か分からない男性(笑)と5人でレストランへ。

また勧められるまま注文したので、また私だけみんなの2倍の料理を食べました。

先にメインを決めたので、スープにどちらもポーランド伝統の、ジューレック(発酵ライ麦のスープ)を飲むか、バルシチ(ビーツのスープ)を飲むかで、それぞれお勧めした2人がワイワイ言い合い、結局「2つ飲みなさいよ!」となり、2つ飲みました(笑)

最初にジューレックを飲んで、更にメインと一緒にバルシチ。もうお腹が真ん丸になるんじゃないかと思いました。

話題は尽きず2時間くらいレストランにいてすでに10時過ぎなのですが、町が見たかったら案内するよと言ってくれたので、お言葉に甘えます。

車を丘まで走らせ、夜景を見に連れて行ってくれましたウクライナの国境がほんとすぐそこ。

町を挟んで反対側の丘にも車で行き、両側から町を眺めました。

風も強く寒すぎるので長居はできませんでしたが、素敵な時間でした~

11時半近くなってホテルに帰りました。

今回以前書いたようにホテルを渡り歩くことを予想していたので、温かいものを飲んでちゃんと休みたいと思って旅行用の小さな簡易ポットを持ってきたのです。スープやコーヒーなどと一緒に。

それは全く使うことはありませんでした。

ありがたいことだなぁと思っていたのですが、ポットを眺めているうちに、せっかく持ってきたんだし!!と悔しくなって、シャワー浴びた後、お湯を沸かしてコーヒーを飲みました

寝る前なのに(笑)

でも、これで全てのリサイタルは終わりました。

実感が湧くのはもう少し後でしょうけれど、満足に終えることができました

音楽だけを考えている毎日・・・練習していないのに、なぜか自分の音楽がだんだん豊かになった気がします。

日本で、この空き時間に弾かねば!!ときゅうきゅうした練習をしていると、じっくり音楽に向き合うことを忘れがちになっているのでは・・・改めてこれからの音楽とピアノへの向き合い方を考えながらコーヒーを飲みました。

明日はポーランド最後の日ですが、予定盛りだくさんです。